建物は適切な改修を行ってこそ、美観も性能もその時代や使用環境にふさわしいレベルで維持されます。
例えば、堅牢なイメージのあるコンクリート。一昔前は鉄筋コンクリート建物の耐用年数は100年と言われていましたが、実際には物理的・経済的な価値の劣化により商業用建築物などでは30〜50年位で解体されています。特に高度成長期の後半では、この傾向は顕著でした。このように素材としては長期耐久性があると思われているコンクリート建築物も、時間の経過と共に劣化が進行したり、要求する機能が満たせずに陳腐化してしまいます。
日本建築学会が発表した各国の住宅寿命に関する資料によると、イギリスの住宅寿命は141年。そしてフランスは85年、ドイツ79年、アメリカが103年であるのに対し、日本の住宅の寿命は気候風土の違いはあるものの、わずか30年とされています。
つまり建物の寿命は設計仕様にも影響されますが、適切な建物診断と診断に基づいた改修を行うことによって、本来なら何倍にも伸ばす事が出来るのです。
日本では現在、大量のマンションが大規模改修の時期を迎えており、私達もマンションの理事会より改修に関する相談を頻繁に受けます。改修専門メーカーとして相談を多く受ける中で、建設業界が抱える大きな課題に気がつきました。
それは建設業界では、これまで新築ばかりに熱心で、改修に真剣に取り組んでこなかった為、建物診断や診断に基づく改修提案を行える技術を持った設計事務所や建設会社が驚くほど少ないという事実です。
私達が考える建物改修とは、その建物と使用する方たちにとって必要な改修を、必要な分だけ施工すること。
また建物も人間の病気と同じように早期発見が大切です。
例えば鉄製の手摺りに錆が出始めたとしましょう。この時なら塗装をすれば済むものを、放置すれば錆が進行し、穴が開き、崩れ落ちてしまいます。こうなると手摺りの交換や溶接といった大掛かりな工事、更に根元まで腐食していた場合は埋め込み部分や接合部の周辺まで解体が必要になり、費用も大幅に増加してしまいます。
適切な建物診断を行い、最適な時期に、要求されている必要な改修工事を実施することによって、最少の費用で建物を長く、時代や使用環境に適した状態で使い続ける事ができるのです。
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